【レビュー】TENDRE / LIFE LESS LONLEY ~ 都会的なサウンドは屋上プールを連想させる ~
ファンク、ジャズ、R&B、ディスコ等のダンスミュージックに対して非常に深い造詣を感じさせる。それがこの作品を聴いた第一印象である。
聴き手が安心してリズムに乗れる堅実なビートをベースに、浮遊感のあるホーンやエレピが見事に都会的なサウンドを作り出している。Bluetoothの防水イヤフォンでこのアルバムを聴きながら、ビルの屋上プールを貸し切って泳ぎたくなる、そんな気持ちにさせてくれる作品だ。
ノスタルジーとフューチャーの見事な融合
#1 LIFE
レコードをサンプリングした時のようなプチプチノイズを含んだサックスのフレーズでこの曲は始まる。
しかし、すぐにおしゃれなクリーントーンのギターサウンドが聴こえてくると同時に、さきほどまでサンプリング風だったサックスの音もクリーンなサウンドに切り替わる。
この瞬間、ノスタルジーな情景が一気に近未来的なものへと変化する。
ドラムは重心が低めでどっしりとしたビート。うねるベースとの相性も抜群である。
スローなパートとダンサブルなパートのメリハリがはっきりしており、聴き手を全く飽きさせない。
過去の遺産の模倣でもなければ、過去と決別した現代だけのサウンドだけでもない。
まさにノスタルジーとフューチャーの見事な融合。
これこそ真のシティ・ポップなのかもしれない。
これで踊れないやつなんているのか?
#3 FRESH feat. Ryohu
ラッパー、DJ、トラックメイカーとマルチに活躍するRyohu(呂布)をフィーチャーした曲。
地を這うようなベースラインを基調としたこの曲のグルーヴは半端じゃない。間違いなくアルバム全曲の中で最もファンク色が強く、とにかくリズム方向にパラメータを振り切っている。本来、レビューに個人的な趣味を挟むべきでないのは承知の上で申し上げたい。
結局ファンクが最高なんすよ!!!
・・・取り乱してしまい大変失礼しました。
気を取り直して。この曲を聴くと「これで踊れないやつなんているのか?」と思ってしまうほど、自然と体が動き出す。それくらいダンサブルでグルーヴィーなアレンジ。素晴らしいとしか言いようがない。
個人的にはアルバム全曲の中で1番グッときた曲。劇推しだ。
楽しい時は永遠には続かない
#9 TAKE
子供のころ、親に連れて行ってもらった遊園地。
そこで過ごす時間が楽しければ楽しいほど、帰るのはとても悲しく感じる。
子供のころの記憶を思い出させる、この曲にはそんな魅力がある。
アルバム後半になるにつれてダンス色は薄くなり、メロウな曲が増えてくるのだが、特にこの曲を聴いた瞬間、決定的に「家に帰る時間が来てしまった」という気分になる。
おじさんになった私は、この展開にはジーンとならざるを得ない。
ああ、帰りたくないけど、今日はもう帰らないといけない。
でも、この楽しい遊園地は消えたりしない。
また遊びに来ればよいのだ。
だから、俺は泣かない。
今日は本当にありがとう。心から楽しかった。