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【アルバム紹介】D'Angelo / Voodoo ~ もはやこれは合法薬物 ~

Brown Sugarで衝撃的なデビューを果たしたD'Angelo

しばらくの休止期間を経て、彼は処女作の出来を大きく上回る作品を世に放つ。

R&B/Soul史に残る名盤「Voodoo」である。

薬物を連想させるほどDopeなグルーヴ

#1 Playa Playa

アルバムをプレイヤーに挿入した瞬間、スピーカーから呪術的なグルーヴが聞こえてくる。

頭のほんの数秒を聴いただけでわかる前作との明らかな違いは、グルーヴの"生感"である。ドラムとベースの音がそれぞれ正確なタイミングからズレまくっている。ここまでくるとドラマーのクエストラブとベースのピノ・パラディーノは酔っぱらっているのかと思ってしまうほどである。しかし、不思議なことにそのズレまくったグルーヴが妙に心地良いのである。素人が真似しようと思ってもそれはリズム感のないただの下手クソの音にしか聴こえないと思うが、プロがあえてそういうことをやるとここまで気持ちよくなるのかと、驚いてしまう。聴けば聴くほどクセになるこの曲はもはや合法的な薬物といっても過言ではないだろう。

もったり&ねっとり感がたまらない

#7 One Mo' Gin

アルバム全曲の中でも、特にこの曲はドラム・ベースのレイドバック感が際立っている。体でリズムを刻んでいると所々でリズムがついてこなくなる瞬間があり、体を後ろに引き戻される感覚になる。だがそれがたまらない。

左チャンネルから聴こえるキーボードは絶妙にオートワウがかかったような音色に音作りされており、ねっとりしたグルーヴの中にもしっかりと浮遊感を生み出している。心地良さを感じられる範囲で、限界までうねるグルーヴを突き詰めている。このバランス感が天才的である。

ジャズスタンダードもD'Angelo色に染まりきる

#10 Feel Like Makin' Love

ジャズのスタンダードも彼の手にかかればファンクネス100%の超絶グルーヴナンバーに染まってしまう。

マリーナ・ショウロバータ・フラックのFeel Like Makin' Loveしか聴いたことがない人は絶対に度肝を抜かれることだろう。

ただ、この曲でもD'Angeloのバランス感覚は絶妙である。イントロのループパートを聴いただけではジャズ感ゼロ、ゴリゴリのファンクなのだが、ボーカルが入ってくると一気にジャズの空気が流れ込む。渦を巻くようなドス黒いグルーヴの中に、ジャズ特有の緊張感、浮遊感を感じされてくれる。こんな手法、それまでの音楽界に存在したのだろうか。

おわりに

彼の音楽の前では、ジャンルがどうのこうのなんて話は無意味だ。よく彼の音楽や彼のフォロワーの音楽のことをネオ・ソウルと呼んだりするが、わざわざそれを定義する必要はあるのだろうか。今まで聴いたことないサウンド、クセが半端ない、でもなぜか心地良い。それで十分ではないか。

あなたも是非このアルバムを手に取って、合法的にD'Angelo中毒に侵されてほしい。

 

Voodoo

Voodoo