【山下達郎】ファンク / R&B だけでおすすめ10選 (マニア向け)
山下達郎といえば「Ride On Time」や「クリスマス・イブ」、「僕らの夏の夢」など、数多くのポップスの名曲が有名である。
最近はシティ・ポップのブームで再び注目を浴びているが、今回はあえて、達郎のファンなら絶対に知っているけど最近聴き始めたという人は知らないかもしれない、マニア向けの曲、それもファンク/R&Bナンバーだけで10曲選んでみた。
どれも日本人離れした作曲センスが光る名曲ばかり。
それでは早速紹介していこう。
WINDY LADY
1976年に発表されたアルバム「CIRCUS TOWN」に収録された1曲。
ALLAN SCHWARTZBERGの跳ねたドラムとWILL LEEの泥臭いベースが見事にマッチしている。ソロデビュー1発目のアルバムからこんな大物とやりあってしまう達郎、この時点でただものではないことは明らかだったのだろう。
達郎公式のMVはないが、代わりにEd MottaとDavid T. Walkerが東京ブルーノートでこの曲をカバーした時の動画がEd Mottaの公式チャンネルでアップロードされているので紹介したい。
DANCER
1977年に発表されたアルバム「SPACY」に収録された1曲。
いきなり村上"PONTA"秀一のぶっといドラムで始まり、そこに細野晴臣のグルーヴィーなベース、一切の無駄なくおいしいところだけをおいしく弾く松木恒秀のギターが乗っかってくる。ファンク以外の何物でもない。素晴らしすぎる一曲。
ちなみに、達郎の曲の中ではマイナーなほうだと思うが、案外ライブ演奏される率は高い。
エスケイプ
1978年に発表されたライブ盤「IT'S A POPPIN TIME」に収録された1曲。
約13分と長尺で、しかもそのほとんどが同じコードパターンの繰り返しなのだが、各楽器のソロパートが半端なく光っており、全く飽きさせないところがこの曲の凄いところ。
松木恒秀の渋すぎるギターが聴きどころ。
LOVE CELEBRATION
1978年に発表されたアルバム「GO AHEAD!」に収録された1曲
このアルバムといえば圧倒的にBOMBERがメジャーだが、あくまでこの記事は「マニア向け」という前提で執筆しているため、あえてここでは取り上げない。
だが、やはりLOVE CELEBRATIONもBOMBERと同様、田中章弘のファンキーなベースが聴きどころである。
素人判断ではBOMBERよりLOVE CELEBRATIONのほうが演奏難度が高いように感じる。
HOT SHOT
1979年に発表されたアルバム「MOONGLOW」に収録された1曲。
このジャンルのマニアなら聴いてすぐわかる、そう、ISLEY BROTHERSを意識したサウンドだ(特にギター)。
それでも達郎は自身のファンクネスを全面に押し出している。ただ海外のものを模倣するのではなく、あくまで自分のものとして新しいファンクを生み出す。その咀嚼力が素晴らしい。
SILENT SCREAMER
1980年に発表されたアルバム「RIDE ON TIME」に収録された1曲。
このアルバムもアルバムタイトル曲である「RIDE ON TIME」が圧倒的にメジャーだが、今回はよりファンクなナンバーのSILENT SCREAMERを推したい。
やはりこの曲もISLEY BROTHERSの影響を感じるが、よりヘビーでロック色の強い仕上がりになっている。良い意味で本場よりクセが強い。こんなミュージシャン、日本で達郎以外にいるだろうか。
このアルバム以降、青山純(Dr)と伊藤広規(Ba)という黄金コンビでの作品が続く。
HEY REPORTER!
1982年に発表されたアルバム「FOR YOU」に収録された1曲。
別の記事でも紹介したが、SLY & THE FAMILY STONEの「Thank You For Talking To Me Africa」を彷彿とさせる曲構成。エッジの聴いたサウンドでファンクネスMAX。
↓別の記事
メリー・ゴー・ラウンド
1983年に発表されたアルバム「MELODIES」に収録された1曲。
可愛らしい曲名とイントロのキラキラキラという音から最初はバラードなのかと思わせといてからのゴリゴリのスラップベースである。完全にファンク。完全にハメられた。またやってくれたな、達郎よ。ありがとう。
ちなみにこの曲は最近のシティ・ポップ・ブームよりも前に、よりアングラな「VAPORWAVE」というジャンルにおいて有名であった。
この界隈で有名なMACROSS82-99というトラックメイカーが「NEW DAWN」という曲で大胆にメリー・ゴー・ラウンドをサンプリングしていたのだ。
FLAGILE
1998年に発表されたアルバム「COZY」に収録された1曲。
この曲の第一印象
R&B通り越してHIP HOPやん!
しかもボーカルはファルセットが中心。HIP HOP系の打ち込みのビートと達郎の美しいファルセットが見事にマッチしている。常に新しいスタイルを模索する達郎の探究心は一切衰えない。
ちなみに最近、TYLER, THE CREATORがこの曲をサンプリングして話題になっていた。
KISSから始まるミステリー <feat. RYO (from ケツメイシ)>
2005年に発表されたアルバム「SONORITE」に収録された1曲。
このアルバム以降、達郎はPro Toolsによるデジタル・レコーディングに切り替えるのだが、その環境下でのレコーディングに非常に苦労したという話がある。
そんな苦しい状況の中で達郎が挑戦したのはやはりHIP HOPだった。
もともとKinki Kidsに提供した曲のセルフカバーだが、完全に別の曲になっている。
打ち込みとは思えないヘビーなビート、グルーヴィーなベース、達郎の声と相性抜群のRYOのラップ、そして新しいレコーディング環境でも絶対に自分らしさを失わないぞという意地すら感じるギターカッティング。大変失礼な表現と承知の上であえて申し上げたい。
達郎は化け物だ。
おわりに
ここまで読んでくれてありがとう。達郎の音楽のすばらしさ、マニアックさが少しでも伝わっていれば幸いである。
なお、達郎の作品のほとんどは定額音楽配信サービスやYouTubeでの公式アップロードがされていないため、ぜひCDを手に入れて聴いてほしい。
それでは。