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【The Meters】Rejuvenation ~ 怒涛のグルーヴ ~

The Metersニューオーリンズを代表するファンク・バンド。

今回は彼らの作品の中でも特に名作として評価されている「Rejuvenation」について紹介・レビューしていく。

個人的評価:★★★★★(5/5)

 

踊らずにはいられない強烈なグルーヴ

ニューオーリンズ・ファンクは他のブラック系ジャンルと比較しても特に強烈なグルーヴを感じることができるジャンルであるが、中でもThe Metersの楽曲はその特色が半端ではない。

まずはRejuvenationの3曲目に収録されている「Just Kissed My Baby」を聴いてもらいたい。イントロはワウの効いたファンキーなギターソロ、続いて絶妙にスウィングしたドラム、その後トーンを絞ったベースがボーカル並みの音量でうなりだす。これだけのパートでこの曲の印象の90%を決めているといっても過言ではない。必要最低限の楽器、音と音の隙間から生まれるグルーヴ感、フレーズの繰り返しによる中毒性。ファンクにおける最重要項目のすべてがこの曲には詰め込まれている。

非常に偏った考え方かもしれないが、極端な話、私は「ファンク=ベース」だと思っている。

前述のJust Kissed My Babyもそうであるが、このアルバムの楽曲はどれもベースの音量が非常に大きく、またそのノリやグルーブも尋常ではない。そのため、私が個人的に定義するファンクの方程式を正しいと仮定するなら、私の知る限りこれは最強クラスのファンキーさを誇るアルバムなのである。

 

聴き疲れしない、良い意味でのスカスカ感

このアルバムの楽曲はすべて必要最低限の音で構成されている。そのため、現代の音楽と比べれば音圧が低く音数も少ないためスカスカな印象を受けるかもしれない。ただ、それは悪いことではなく、むしろ良いことだと私は考える。

このアルバムを最初から最後まで通して聴くと約45分かかるが、ずっと大きな音が鳴りっぱなしとならないため、最後まで聴き疲れすることなくサラっと聴けてしまう。これを現代の音楽でやってみると、意外と聴き疲れて、最後まで休憩なしでは聴けないという経験をすることがしばしばある。

何かと情報量が膨大になってきている時代だからこそ、逆にこういったローファイでオーガニックなサウンドの素晴らしさを再認識できるのかもしれない。

 

Apple Musicで聴ける

このアルバムが発表されたのは1974年、そしてどちらかと言わなくてもマニアックなジャンルの音楽だが、意外にもApple Musicで聴くことができる。ほかにもThe Metersの有名なアルバムの多くはApple Musicで聴くことができる。歴史的名盤が月々定額払いの格安料金で聴き放題とは、本当にありがたい話である。

 

おわりに

さて、ここまででThe Metersの「Rejuvenation」の魅力は伝わっただろうか。まだニューオーリンズ・ファンクを聴いたことがないという人はぜひこの作品から入門してもらいたい。グルーヴの海に溺れ、ファンク無しでは生きていけなくなること間違いなし。

 

Rejuvenation

Rejuvenation

 

【山下達郎】 FOR YOU ~ J-Pop史に残る名盤 ~

昨今、世界中の音楽ファンを魅了している日本のシティー・ポップ。

70~80年代の邦楽が再評価される中、特に多くのリスナーの心をつかんでいる作品が山下達郎のアルバム「FOR YOU」である。今回はそんなJ-Pop史に残る名盤の魅力を紹介していく。

個人的評価:★★★★★(5/5)

 

 

「夏!」を感じさせる開放的なサウンド

このアルバム最大の魅力は何といってもその圧倒的な「夏!」感である。

そのメッセージを象徴するように、1曲目の「SPARKLE」は歯切れのよいギター・カッティングから幕を開ける。このイントロ部分だけでも永遠に聴いていられるくらい心地良く、一瞬でリスナーの心を鷲掴みにする。

ちなみに、山下達郎のライブは必ずと言ってもよいほど「SPARKLE」から始まる。このイントロを聴いた瞬間、夢のような山下達郎の世界に入り込むことができる。まだ山下達郎のライブに行ったことがない方は、倍率は高いがぜひ頑張ってチケットを手に入れて生のタツローサウンドを堪能してもらいたい。

さて、脱線してしまったが、本題に戻ろう。

「SPARKLE」以降の曲も歯切れのよいギター・カッティング、スラップを多用するファンキーなベース、タイトでベースと相性抜群のドラム、そしてそれらをバックに朗々と歌い上げる、そういった曲は都会的で開放的、そしてダンサブル。まさに「夏!」を感じさせる要素・魅力がたっぷり盛り込まれている。

 

イケイケだけじゃない、物語のある曲順構成

山下達郎の作品は、そのどれもがアルバム全体を通して聴くことで、一つの物語を感じることができる。もちろん「FOR YOU」も例外ではない。特に、レコードで聴くと顕著である。

FOR YOUのA面はダンサブルな「SPARKLE」から始まり、しっとりとした「FUTARI」で終わる。また、B面もダンサブルな「LOVELAND, ISLAND」から始まり、やはりバラードの「YOUR EYES」で終わる。このような曲順構成にすることでアルバム全体のメリハリがつく。

ダンサブルでイケイケな曲一辺倒にならず、アルバム全体で一つの作品なのだという山下達郎のこだわりが伝わってくる。

 

マニア向けのヘビーなファンクナンバーも

最後に、個人的に大好きなマニア向けとも言える曲「HEY REPORTER!」について紹介する。

この曲は山下達郎竹内まりやと結婚する前にパパラッチに追いかけられた経験から作られたものである。

その特徴は、とても万人受けするとは思えないパンチの効いたドス黒いファンクサウンドである。私はこの曲を初めて聴いたとき、Sly & The Family Stone の 「Thank You For Talking To Me Africa」を思い出した。もう完全に洋楽ファンクなのである。一癖も二癖もある曲だが、コアなタツローファンには堪らないのだ。聴けば聴くほど良さがわかる所謂「スルメ曲」と言えるだろう。

 

おわりに

さて、今回の記事で「FOR YOU」の魅力は伝わっただろうか。J-Pop史に残る名盤をぜひ一人でも多くの人に手に取って聴いていただきたい。そして「こんな素晴らしいアルバムが既に80年代に作られていたのか!」という驚きを感じてもらいたい。今聴いても古さを全く感じないことは100%保証できる。それが山下達郎の作品であるから。

では皆さん、良い夏を。

 

FOR YOU (フォー・ユー)

FOR YOU (フォー・ユー)

  • アーティスト:山下達郎
  • 発売日: 2002/02/14
  • メディア: CD